"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

論文がアクセプトになりましたが…

先日、rejectが続いて、投稿先をどうしようかと、ブログにも投稿していた原著論文がようやくSurgical Neurology Internationalにアクセプトになりました。 結局、 JNS Spine→ reject World Neurosurgery→ reject Clinical Neurology and Neurosurgery→ rejec…

DuraGenの使用経験

私のいた病院では、使う機会のなかったDuraGenですが、先日、Duragenを使っているところを見学させて頂く機会がありました。硬膜の元になる、という意味のDura-genですが、重宝している先生も多いのでしょうか。 私は、硬膜形成が必要な場合、primary closur…

rejectが続く論文。次はどこに投稿するか…

先日、とある原著論文がrejectになりました。これで3つめの雑誌… この論文、そこそこ自信はあったので、JNS Spineから投稿したのですが、立て続けにrejectされると、心が折れますね… ちなみに、投稿先と、rejectまでの期間ですが、 ・Journal of Neurosurger…

STRATAFIX(ストラタフィックス)の使用経験

先日、他の病院に手術に行った際に、STRATAFIX(ストラタフィックス)での閉創を勧められて、初めて使ってみました。ご存じの人も多いかとは思いますが、SymmetricとSpiralがあり、Symmetricが筋層、Spiralが皮下の閉創を行うものだと思います。 STRATAFIX Sym…

椎間板性腰痛と固定術

先日、L2/3のModic changeを伴う椎間板性腰痛の患者さんが、保存的加療で良くならず、良くなる可能性があるなら手術を受けたいと、脊柱管狭窄もなく適応としては、微妙だったものの、希望も強かったため、1椎間のLLIFおよびPPSを行いました。 椎間板性腰痛に…

Nintendo リングフィットと慢性腰痛

Nintendo Switchの『リングフィットアドベンチャー』で腰痛や臀部痛が軽減するという論文が出ていました。千葉大学でプレスリリースされています。 家庭用ゲーム機のフィットネスゲームで慢性的な腰痛が改善(chiba-u.ac.jp) Sato T, et al. Effects of Ninte…

肘部管症候群の手術

先日、はじめてKing法での肘部管症候群の執刀をさせて頂きました。 手術の注意点のおさらい。 ・患者が左手の障害の場合、術者が右手であれば、近位側から遠位側へ剥離するので、患者の体位は、腹臥位にして、回内させて肘部管が上を向くようにする。 ・皮膚…

OLIFとTLIFの手術成績の比較

腰椎変性すべり症に対するOLIFとTLIFの手術成績の論文が、BioMed Research Internationalという雑誌に出ていました。Biomed Res Intは、Hindawi社のjournalで、IFは2.276ついていますが、APCは2400ドルと高めです(Du X et al. Oblique Lateral Interbody Fus…

ペディガードとSpineGuard

先日、脊髄外科学会がありました。その中に、PPSの穿刺の際に使うペディガードというプローブの報告がありました。ペディクル壁や椎体の穿破が発生する前に、音と光で警告を発する補助的な機能が付いています。 Jプローブの代わりになるようなものですが、音…

高位診断と髄節と短母指外転筋(APB)

脊椎外科医にとって、神経診察は非常に重要ですが、混乱することもあります。髄節に関する記載など、本によって、微妙に異なります。ちょっと整理してみました。 とりあえずは、下記のような形で髄節診断はある程度、できるのではないでしょうか。 ・ C5→三…

橈骨逆転反射と手指屈筋反射

先日、頚椎症性筋萎縮症を疑う症例が外来にきました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)も鑑別にはなるために、念のため、神経内科にコンサルトしたところ、橈骨逆転反射もあり、C5,6髄節障害で間違いなく、頚椎症で、ALSではない、との返事を頂きました。 橈骨逆転反…

両開き(double-door)と片開き(open-door)の比較

椎弓形成術には、両開き(double-door)と片開き(open-door)があります。 私は、両開きですが、最近は、片開きの先生が多いような印象があります。片開きの方が、恐らく、手術時間は短くできるとは思います。一方で、C5麻痺の頻度は片開きの方が高い、といった…

脊髄損傷患者の血圧管理

脊髄損傷患者の血圧管理に関して、JNS spineに論文が出てました(Haldrup M et al. Initial blood pressure is important for long-term outcome after traumatic spinal cord injury. J Neurosurg Spine. 2020)。 デンマークからの論文ですが、一般的なのか…

PEDを始めるならILからが良い?

先日、他院に脊椎の手術見学に行ってきました。他の病院の手術は使う道具などに工夫があることも多く、非常に勉強になることが多いです。 PEDとPLIFの見学でした。 PLIFはオープン手術でしたが、透視は使わず(私の病院では透視下になります)、PS(Pedicle scr…

脊椎の邦文(日本語)の症例報告はどこに投稿するか?

症例報告を英文誌に投稿したいものの、内容的に厳しそうだったり、初めての症例報告だったり、色々な理由で、日本語で書いて、邦文誌に投稿することがあると思います。 その場合、やはりどこに投稿すればよいか?という問題があります。 候補としては、 ・脊…

脊椎の症例報告をどこに投稿するか?(2)

以前、症例報告(ケースレポート、case report)をどこに投稿するか?というタイトルで記事を書きましたが、千葉大学の整形外科のホームページ内に、いくつかの投稿先が載っていました。 症例報告の投稿先 | 千葉大学大学院医学研究院整形外科学 (chiba-u.jp) …

脊椎外科医は神経学診察、MMTの勉強から

幸いにも今の病院には、4月になると、脊椎手術の経験がない新しい先生が入ってきます。手術はまずは助手ですし、徐々に覚えてもらうとして、まず、必須なのが、神経学的診察だと思います。 参考書は、自分が脊椎を始めた10年くらい前のときには、整形外科医…

セメント注入が可能なpedicle screw

先日、MRさんが、日本からもセメント注入が可能なpedicle screwが出る、というような話を聞きました。実際に、どのくらいの有効性なのか、論文を見てました。 2015年にCLINICSから出ているのが、中国のFei DaiらのSurgical treatment of the osteoporotic sp…

ロボットを利用した頚椎スクリュー挿入

中国からの論文を目にする機会が多くありますが、頚椎スクリューを刺入する際に、ロボットにアシストをしてもらった方が、正確性が高い、という論文が出ていました(Fan M et al. Improved Accuracy of Cervical Spinal Surgery With Robot-Assisted Screw In…

3次元ロッドベンダー「Bendini」

longの固定をする際に、ロッドのベンディングに苦労させられることがあります。longの固定頻度が高いわけではないのですが、先日、胸椎からS2-alar-iliacまでin situでの固定を行った症例で、NuvasiveさんのBendini、ベンディーニを使いました。PPSで行った…

終板を貫いたpedicle screwの刺入法(Single or Double Endplates Penetrating Screw)

先日、Webinarで杏林大学の竹内先生がDouble endplates penetrating screw(DEPS)について講演してくれました。 pedicle screwのtrajectoryを頭側に傾けて、結果として、screwを刺入した椎体の頭側の終板およびその一つ上の椎体の尾側の終板の2つの終板(endpl…

脊髄損傷に対する再生医療、ステミラック治療の論文

以前、脊髄損傷の症例を、脊髄再生医療のひとつであるステミラック治療を札幌医大にお願いして、転院させて頂いたことがありましたが、その札幌医大から、ステミラック治療に関して、Phase 2のstudyで、13例のケースシリーズが出ていました。2021年2月のacce…

椎弓形成術後の後弯変形

先日、頚椎症性脊髄症で椎弓形成術を行った患者で、術後に首下がりになった症例を経験しましたが、頚椎椎弓形成術の術後の後弯変形に関して、興味深い論文がありました(Fujishiro T et al.Significance of flexion range of motion as a risk factor for kyp…

腰椎分離症について

先日、腰椎分離症の中学生の診察をしました。主訴は腰痛で、Xpを取ると、分離が疑われたので、CT検査したところ、片側の腰椎分離症でした。 分離症は、腰椎の進展、回旋が繰り返されることによる疲労骨折です。 腰椎分離症に関して、徳島大学の西良先生が解…

椎孔周囲スクリュー(paravertebral foramen screw: PVFS)

先日、Webinar("Web"と"Seminar" を合わせた言葉)で筑波大学の國府田先生が、頚椎後方固定術の基本について話をされていたので、それを聴講しました。 色々な解説があったのですが、その中で、PVFS(paravertebral foramen screw)について話がありました。私…

MRI所見でBKPの適応を考える

骨粗鬆症をベースにした胸腰椎圧迫骨折は、今後も増えていく疾患と思われ、それに対する外科的治療として、バルーン椎体形成術(BKP:Balloon kyphoplasty)があります。 その適応に関しては、色々と議論はあるものの、個人的には、保存加療で疼痛が改善しない…

周術期の抗血小板薬は中止するか?

高齢化に伴い、抗血小板薬内服症例の手術が増えています。 周術期に抗血小板薬を継続したままにするか、一旦、休薬するかどうかは、各施設や医師によって対応が違うように思います。 ・抗血小板薬を休薬すれば、血管系イベント発症のリスクが上がる。 ・抗血…

肩甲上腕反射(scapulohumeral reflex)による神経学的診断

先日、環軸椎亜脱臼によるC2歯突起偽腫瘍に、頚椎症性脊髄症を合併した症例を経験しましたが、画像上、C1およびC3/4レベルでの脊髄の圧迫があり、どちらが主たる問題か、診断する必要がありました。 このようなときに、有用かもしれないのが、肩甲上腕反射(…

O-C固定(後頭骨-頚椎固定)と嚥下障害

先日、O-C(後頭骨-頚椎)固定が必要と思われる症例があり、嚥下障害リスクを検討するために、以前、学会で聴講したSwallowing line(S-line)の論文を確認してみました。(Kaneyama S et al. The Prediction and Prevention of Dysphagia After Occipitospinal F…

LLIF後の腹筋麻痺

椎体間固定術に、LLIF(Lateral Lumbar Interbody Fusion:側方経路腰椎椎体間固定術)、が選択される頻度が高くなっているようです。 変性側弯などには非常に有効なアプローチだと思います。術後の合併症として、腸管や尿管、大血管などの損傷が知られています…