"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

内視鏡でできますか?(脊椎の内視鏡手術)

基本的に、内視鏡手術をしていないため、外来で、患者さんに手術の説明をしていると、少し、ムッとする質問が、

"内視鏡で、できますか?"

です。ムッとしてはいけない、と抑えながら、説明を続けるのですが、

ムッとする理由は、2つあるように思います。

 

ひとつは、

この質問をする多くの患者さんは、"内視鏡に関する十分な知識を有していない"、こと

もう一つが、私自身が、内視鏡で手術をやっていないから、ではないでしょうか。

患者さんの知識に関して、

たとえば、腰椎椎間板ヘルニアでば、

MEDとFEDの区別がついていない

患者さんが多いと思います。

内視鏡といっても、色々ある、ことをわかっている患者さんは多くないように思います。

MED(Micro endoscopic discectomy)は、内視鏡は使うものの、われわれがやっている

顕微鏡のmicro LOVE法とさほど違いはありません。

岩井整形外科のホームページで、内視鏡治療に関して、詳しく書いていますので、参考にしてください。

MED:椎間板ヘルニアの内視鏡下手術|岩井整形外科内科病院 (iwai.com)

皮膚切開もMEDが3㎝くらいとすれば、micro LOVEは4cmくらい。

手術時間も私のヘルニア手術は、1時間くらいで、MEDを行っている施設の平均くらいのようです。

 FED(Full-endoscopic discectomy)は、MEDとは、全く違う手術といってよいのではないでしょうか?

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RIWOspine

皮膚切開は1㎝程度で済み、低侵襲手術といえば、この手術を想像する医師は多いと思います。

したがって、内視鏡といっても、MEDかPEDか、で違うので、そのあたりの啓蒙は必要かと思います。

脳神経外科の脊髄外科学会の中には、

低侵襲・内視鏡脊髄神経外科研究会 (cs-oto.com)

があります。その会の技術認定者は、平成30年でわずか20人弱程度です。

整形脊椎の中で、どれくらいの先生が、されるのかは把握できませんが、それよりは多いとは想像されます。

本年度の日本脊椎・脊髄神経手術手技学会でも、胸椎疾患もFull-endoscopicでされている報告もありました。

私自身、PEDをやろうとはしていて、講習会や、外国でのCADAVER courseも受けましたが、施設ではやっていないこともあり、患者さんに提供できるまではいっていないのが現状です。

何でもかんでも内視鏡、(または、何でもかんでもオープンサージェリー)

でやる必要はないと思いますが、これは、脳神経外科でいえば、

何でもかんでも血管内、または、何でもかんでも開頭

と構図としては似ているように思います。

 

今後は、多くの施設では、症例によって使い分けていく、流れになるのではないかとは思います。