患者さんから指摘されて、初めて、言葉の重みに気付かされることがあります。
それは、良い意味でも、悪い意味でも、なのでしょう。
ただ、それを実感する機会は少ない気がします。
つまり、医者は患者さんの思いに気付かない…
もらった手紙で、ハッとしたことがあります。
歩行障害で受診された中年の女性です。
下肢しびれで発症され、他院で、腰椎椎間板ヘルニアと診断されて、保存的加療を受けられていました。
徐々に、下肢症状は進行、その後、いくつかの病院を受診となり、
私の外来に来られました。
上肢症状はないものの、PTR、ATRともに明らかに亢進、していました。
頚胸椎MRIを取ると、C7レベルでの硬膜内髄外腫瘍があり、cordを強く圧迫していました。頚椎でもC7あたりだと上肢症状がはっきりしないことがあります…
そのとき、何気に言ったセリフが、
「この腫瘍が原因ですね。今まで、気付かなくて、ごめんなさい。」
です。いくつかの病院を転々としていて、
後から見る医者は名医、ということもありますが、
最初に見つかっていれば、というような気持ちがあったのかもしれません。
そのときは、別に何とも思わず、そんなこと言ったような、というくらいだったのですが、
治療を終えて、退院前になったときに、その患者さんから、手紙を頂きました。
そこには、
「この言葉を聞いて、"なんて優しいお医者さんなんだろう"と思いました。」
と書かれていました。
言った側としては、特に深い意味もなく、何となく出た言葉なのですが、
受け取る方にしたら、かなり印象深いものになっていたようです。
逆にいえば、何気に言った言葉が、
患者さんとっては、傷付くこと、だったりもするわけで、
言葉は難しいと思ったりします…