"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

病気をみつけられなくて、ごめんなさい

患者さんから指摘されて、初めて、言葉の重みに気付かされることがあります。

それは、良い意味でも、悪い意味でも、なのでしょう。

 

ただ、それを実感する機会は少ない気がします。

つまり、医者は患者さんの思いに気付かない…

 

もらった手紙で、ハッとしたことがあります。

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歩行障害で受診された中年の女性です。

下肢しびれで発症され、他院で、腰椎椎間板ヘルニアと診断されて、保存的加療を受けられていました。

徐々に、下肢症状は進行、その後、いくつかの病院を受診となり、

私の外来に来られました。

 

上肢症状はないものの、PTR、ATRともに明らかに亢進、していました。

 

頚胸椎MRIを取ると、C7レベルでの硬膜内髄外腫瘍があり、cordを強く圧迫していました。頚椎でもC7あたりだと上肢症状がはっきりしないことがあります…

そのとき、何気に言ったセリフが、

 

「この腫瘍が原因ですね。今まで、気付かなくて、ごめんなさい。」

 

です。いくつかの病院を転々としていて、

後から見る医者は名医、ということもありますが、

最初に見つかっていれば、というような気持ちがあったのかもしれません。

 

そのときは、別に何とも思わず、そんなこと言ったような、というくらいだったのですが、

治療を終えて、退院前になったときに、その患者さんから、手紙を頂きました。

 

そこには、

「この言葉を聞いて、"なんて優しいお医者さんなんだろう"と思いました。」

と書かれていました。

 

言った側としては、特に深い意味もなく、何となく出た言葉なのですが、

受け取る方にしたら、かなり印象深いものになっていたようです。

 

逆にいえば、何気に言った言葉が、

患者さんとっては、傷付くこと、だったりもするわけで、

言葉は難しいと思ったりします…