"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

O-armのNavigationを利用した頚椎椎弓根スクリュー

先日、頚椎スクリューを挿入する際に使用するガイドテンプレートに関して、投稿しましたが、それほど一般的にはなっておらず、現状では、ナビゲーションシステムを利用している施設が多いかと思います。

多くは、術前のCT画像を利用したナビゲーションかとは思いますが、最近は、O-armで術中にCT撮影を行う施設も増えているようです。

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東京女子医科大学整形外科よりO-armを用いたナビゲーションの治療成績が出ていました(Wada K et al. Cervical Pedicle Screw Insertion Using O-Arm-Based 3D Navigation: Technical Advancement to Improve Accuracy of Screws. World Neurosurg. 2020)。

頸椎椎弓根スクリュー(cervical pedicle screw)の挿入の際に、この論文は、いくつかの工夫を加えた後、正確性の改善が得られたかどうかを検討しています。

下穴をあける際、ドリルが曲がってしまうことを予防するための、ドリルガイドスリーブを利用するようになって(Phase 3,4)、正確性が高くなった(スクリュー逸脱は1.2%)、と報告しています。

Referenceフレームの固定性をよくするために、C3-5棘突起に固定するようにした、という工夫(Phase 2)は、正確性にはさほど寄与しなかったようです。つまり正確性の低下は、画像的な問題ではなく、手技的な問題に起因していたようです。

また、過去の報告と比較をしています。2017年の下川先生と高見先生のNeurosurgical reviewの論文では、逸脱率2.8%(9/310)、Grade2以上の逸脱(2mm以上、4mm未満)が0.6%(2/310)であったのに対して、この論文では、前述の手技に工夫を加えた後(phase3,4)は、逸脱率1.2%(2/174)で、Grade2以上の逸脱はなかった、とのことです。

下川先生の報告などはprobeを使用しており、probeよりもドリルの使用が良いのではないかと考察されています。確かに、特に骨が固い場合などはprobeは良くないのかもしれません。

99%前後の正確性で、Grade2以上の逸脱ゼロであれば、十分に思いますが、正確性だけをみると、菅原卓先生のガイドテンプレートの方が成績は良いです。

O-arm導入が市中病院では困難であることを考えると、従来の術前CT画像でのナビゲーションか、より安全に行うには、ガイドテンプレートが良い気がしています。