"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。

O-C固定(後頭骨-頚椎固定)と嚥下障害

先日、O-C(後頭骨-頚椎)固定が必要と思われる症例があり、嚥下障害リスクを検討するために、以前、学会で聴講したSwallowing line(S-line)の論文を確認してみました。(Kaneyama S et al. The Prediction and Prevention of Dysphagia After Occipitospinal Fusion by Use of the S-line (Swallowing Line). Spine (Phila Pa 1976). 2017)

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脊髄外科にも2019年に総説が載っていました。

後頭骨頚椎固定術後嚥下障害の病態と予防 (jst.go.jp)

McGregor line(硬口蓋と後頭骨を結んだ線)前弓中心と頚椎前弯の頂点を結んだ線で成す角度(Pharyngeal inlet angle(PIA))を検討したところ、90°以上あれば、術後、嚥下障害は出なかった、ということです。

そこで、McGregor lineと90°となるように前弓中心を通る線を、Swallowing line(S-line)とすると、頚椎前弯の頂点の位置が、S-lineよりも右側に来るように(S-line(+))、固定を行えばよい、と提案しています。

O-C固定の嚥下障害に関しては、O-C2角が術前後で変化がないようにする、といった記載が多くありますが、このS-lineはより簡便な方法です。

そして、手術の際には、頭部固定時、3点ピン固定した頭部を、長軸に牽引した上で、頭蓋を後屈させると、比較的容易にS-line(+)が得られるとあります。

それだけでいいのか、とは思いますが、嚥下造影検査からは食道の通過障害が、頚椎前弯が最も突出した部位で生じていることからも、このS-lineの有用性を示しているとあります。

PIAを90°以下にすると、嚥下障害のリスクが高くなるため、90°以上が推奨されるという報告は、別の著者で、最近の論文にも記載がありました(Wang LN et al. Predictive ability of pharyngeal inlet angle for the occurrence of postoperative dysphagia after occipitocervical fusion. BMC Musculoskelet Disord. 2021)。