先日、頚椎症性脊髄症で椎弓形成術を行った患者で、術後に首下がりになった症例を経験しましたが、頚椎椎弓形成術の術後の後弯変形に関して、興味深い論文がありました(Fujishiro T et al.Significance of flexion range of motion as a risk factor for kyphotic change after cervical laminoplasty. J Clin Neurosci. 2020)。
大阪医大の整形外科の論文です。この論文は、頸椎後縦靭帯骨化症を除いており、ほぼ頚椎症性脊髄症を対象にしています(99例中、97例がCSMで2例がCDH)。手術手技としては、両開き椎弓形成術で、C3椎弓は切除にしています。したがって、C2に付着するsemispinalisは基本的には温存されます。
99例を対象に、解析した結果、術後にC2-C7角の損失が>10°であった症例を後彎変形群(CLL group)とすると、7例で、後彎変形を生じたとのことです(JOAは改善あります)。
この論文は、fROM(neutralのときと、flexionしたときのC2-C7角の差)と、eROM(neutralのときと、extensionしたときのC2-C7角の差)、cSVA(C2-C7 SVA)、C7 slopeなどを測定して、リスク因子を検討しています。
その結果、fROM(neutralのときと、flexionしたときのC2-C7角の差)が、術後の後彎変形のリスク因子であった、とのことです(P<0.001)。そして、37°がカットオフ値になるとのことです。その他のパラメーターでは、有意差はつきませんでした。
結論としては、fROMが40°以上では、術後の後彎変形が懸念されるために、固定などの併用を検討した方がよいとのことです。屈筋群が優位なので、後方除圧で後弯するということでしょうか。症例数は十分ですが、cSVA(C2-C7 SVA)やC7 slopeで有意差はなく、前屈が良くできる症例には注意が必要、ということでしたが、OPLLはまた別なのでしょうか。術後の後弯変形は避けたい合併症であり、非常に興味深い論文でした。