"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

根性膝部痛?膝の痛みと神経根症

日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS)のオンデマンド配信は終わってしまいましたが、レジェンドの1例、というセッションでの久野木先生の神経根症による膝痛、の発表が興味深かいものでした。1993年の臨床整形外科にその論文がありました。

腰部神経根症に伴う膝部痛(根性膝部痛―仮称)の検討 (臨床整形外科 28巻6号) | 医書.jp (isho.jp)

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久野木先生の論文では、L4神経根症の症状として、膝の痛みを訴える患者がいるが、L5,S1神経根症で膝痛を訴える患者は少ない、ということでした。L4障害は下腿内側のしびれや下垂足などで発症するケースが多いとは思いますが、膝の痛みの鑑別でも重要です。

講演では、膝の痛みで、変形性膝関節症の診断で手術がなされたけれど、神経根症の症状であったため、当然、改善が見られなかったケースが提示されていました。

私も以前、膝の痛みが主訴の腰部脊柱管狭窄症、椎間孔狭窄の症例の診断に苦慮した経験があり、非常に興味深く聴講させて頂きました。

膝の痛みは、L3の障害のこともあるかとは思います。

Characteristics of L3 nerve root radiculopathy - PubMed (nih.gov)

上記の論文では、L3神経根症の内、knee painは17例中2例で12%、ということでした。hip painも3例(18%)みられたことは、鑑別に重要だと思います。この論文では、4例は膝関節あるいは股関節疾患と誤診されていた、とあります…

私は、ベースが脳外科ということもあり、C5神経根症と肩関節障害、股関節や膝痛と腰椎の神経根症などの鑑別に苦手意識がありますが、実際に、高齢者では、併発しているケースも多く、脊椎だけにとらわれずに診る必要があるように思います。