"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

化膿性椎体椎間板炎の診断

先日、椎体椎間板炎の患者が紹介になりました。

脊椎を専門にしている医者から見ると、この病気は、一般には知られていない、という印象を持ちます。整形外科から椎体骨折と熱源不明の感染症、ということで相談を受けたこともあるくらいなので、整形といえども脊椎が専門外であると、見る機会があまりないようです…

問題なのが、この病気をあまり知らない先生が患者さんを診察すると、発熱、CRP高値、などから、培養せずに容易に抗生剤投与、になることだと思います。

New England J Medicineの下記の記事が良く引用されています。

Vertebral Osteomyelitis | NEJM

Googleで検索すると、引用件数が562!とあります。

この論文では、strategy and evidenceのsectionがありますが、そこで、血液培養(血培)に関して、

“Blood cultures are crucial in the evaluation of vertebral osteomyelitis”

とあります。椎体椎間板炎が疑われたら、まず、血培、です。

血培陰性であれば、バイオプシーを行います。polymicrobialな可能性があれば、血培の結果を待たず、バイオプシーも行います。膿があれば、CTガイド下でのドレナージでも良いです。

そして、この論文で明記されている下記2点のケースが非常に多い、です。

1.培養前に、抗生剤投与されていると、菌が検出されないことがある。

2.重症感のない症例(敗血症が疑われないようなケース)では、抗生剤投与は、血培や生検で菌が同定されてからにするべき

発熱、腰痛で開業医などに行くと、血液検査をすることもしないこともあるかとは思いますが、とりあえず、抗生剤、が処方されてしまいます。最初に血培を取っているとよいのですが、取られていないことも多いようです(外注で敷居が低くない)。大抵、MSSAや大腸菌、Streptococcusなので、抗生剤が当たって、一旦、解熱したりします。

しかし、1週間くらいで抗生剤は終了になるので、当然、再発します。腰痛や背部痛の訴えは続くので、MRIなどで見つかり、紹介になります。

この論文では、抗生剤投与されていた場合、病態が落ち着いていれば(菌血症でなければ)、少なくと48時間の抗生剤フリーの後に、バイオプシーする、とあります。1-2週間の抗生剤の休薬は、細菌検出率を高めるようです。ただ、急性椎体椎間板炎の場合は、敗血症などの可能性があり、休薬するかどうかは状態によります。