"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

症例報告(ケースレポート)の書き方

最近は、後輩の指導も仕事となり、症例報告(ケースレポート)の添削をする機会も時々、あります。

脳神経外科専門医取得には、査読付きの論文のアクセプトが必要になっていることも影響しているかもしれません。

症例報告を書いたことがないDrに、私がまず、紹介するのは、こちらの本です。

  

論文作成ABC:うまいケースレポート作成のコツ

  

症例報告の書き方を丁寧に解説している本は、この本くらいではないでしょうか?

ポイントとしては、

 

・稀有性を全面にして強調しない

・臨床的有用性という点で、新規アイデアを提唱する

 

ということだと思います。

 

私も、最初は、症例報告は、稀な疾患の経過について書くもの、と理解していましたが、この本は、症例報告はそういうことではない、と説明してくれます。

実際、私も、この本の「2つわかった法」にしたがって、症例をまとめて投稿し、アクセプトされた報告もあります。

とはいっても、世の中の症例報告は、やはり、

稀ということだけを謳っているものも多く

そういう論文が、ある程度、publishされていることからは、必ずしも、こう書かなければいけない、というわけではないと思います。

ただ、症例報告の考え方、書き方に加えて、rebuttal letterの書き方、例文などもあり、非常に価値の高い本だと思います。

 

論文作成ABC:うまいケースレポート作成のコツ

内視鏡でできますか?(脊椎の内視鏡手術)

基本的に、内視鏡手術をしていないため、外来で、患者さんに手術の説明をしていると、少し、ムッとする質問が、

"内視鏡で、できますか?"

です。ムッとしてはいけない、と抑えながら、説明を続けるのですが、

ムッとする理由は、2つあるように思います。

 

ひとつは、

この質問をする多くの患者さんは、"内視鏡に関する十分な知識を有していない"、こと

もう一つが、私自身が、内視鏡で手術をやっていないから、ではないでしょうか。

患者さんの知識に関して、

たとえば、腰椎椎間板ヘルニアでば、

MEDとFEDの区別がついていない

患者さんが多いと思います。

内視鏡といっても、色々ある、ことをわかっている患者さんは多くないように思います。

MED(Micro endoscopic discectomy)は、内視鏡は使うものの、われわれがやっている

顕微鏡のmicro LOVE法とさほど違いはありません。

岩井整形外科のホームページで、内視鏡治療に関して、詳しく書いていますので、参考にしてください。

MED:椎間板ヘルニアの内視鏡下手術|岩井整形外科内科病院 (iwai.com)

皮膚切開もMEDが3㎝くらいとすれば、micro LOVEは4cmくらい。

手術時間も私のヘルニア手術は、1時間くらいで、MEDを行っている施設の平均くらいのようです。

 FED(Full-endoscopic discectomy)は、MEDとは、全く違う手術といってよいのではないでしょうか?

f:id:spine_neuro:20210208115436p:plain

RIWOspine

皮膚切開は1㎝程度で済み、低侵襲手術といえば、この手術を想像する医師は多いと思います。

したがって、内視鏡といっても、MEDかPEDか、で違うので、そのあたりの啓蒙は必要かと思います。

脳神経外科の脊髄外科学会の中には、

低侵襲・内視鏡脊髄神経外科研究会 (cs-oto.com)

があります。その会の技術認定者は、平成30年でわずか20人弱程度です。

整形脊椎の中で、どれくらいの先生が、されるのかは把握できませんが、それよりは多いとは想像されます。

本年度の日本脊椎・脊髄神経手術手技学会でも、胸椎疾患もFull-endoscopicでされている報告もありました。

私自身、PEDをやろうとはしていて、講習会や、外国でのCADAVER courseも受けましたが、施設ではやっていないこともあり、患者さんに提供できるまではいっていないのが現状です。

何でもかんでも内視鏡、(または、何でもかんでもオープンサージェリー)

でやる必要はないと思いますが、これは、脳神経外科でいえば、

何でもかんでも血管内、または、何でもかんでも開頭

と構図としては似ているように思います。

 

今後は、多くの施設では、症例によって使い分けていく、流れになるのではないかとは思います。

学位は取るべきか?

医学博士を取得するかどうかは、医者のキャリアパスでひとつの悩みどころではないでしょうか。

 

学位をとるには、

・大学院に進学して、甲で取得

・大学院にはいかずに、論文を提出しての、乙での取得

のいずれかになります。

恐らく、旧国立(私立も一部はそうでしょうか)の大学病院の医局員は、どこかのタイミングで、

 

大学院に進学

→ベッドフリーで(この期間などは施設による)、基礎研究

→論文アクセプト→博士号

となることが多いのではないでしょうか。

私は旧国立の大学病院の所属ではありませんが、大学院に進学して、基礎研究を行い、無事に論文のアクセプトが得られ、学位取得ができました。

 

私の同期は6人いましたが、卒後10年の段階で、学位所得は3人(50%)で、

その内、2人は大学院進学、もう一人は、院にはいかず臨床研究の成果で、論文学位を取得していました。

 私が市中病院に勤めているときに、大学医局に属さない勤務医が、臨床研究でのPaperで、とある大学の学位を取得していた先生もおられました。

 そうなると、医局に所属することは学位の点でも必須ではないようです。

 

2016年と少し前ですが、M3の記事では、最近は、学位取得希望者は減っているとのことです。

医療維新 | m3.com

まずは専門医、と考える医師が多いようです。

ただ、大学院での研究にも得るものはあるし、臨床論文も書かないよりは、書いた方がいいでしょうから、博士号も結果、取れるものなので、取っておいたらいいようには思います。

脊椎の論文をどこに投稿するか?

脊椎の論文を書いた後、どこに投稿するか、ということですが、少し前の記事ですが、ネットで検索すると、かなり前の記事ですが、

 

整形外科医のための英語ペラペラ道場: 脊椎の英語論文をどこに投稿するか? (seikei-eigo.blogspot.com)

 

を参考にしました。

 

Spine

→European spine journal

→Journal of Neurosurgery: SPINE

 Clinical Spine Surgery

→Journal of orthopaedic science(JOS)

 

とまとめられるでしょうか。

ただ、なかなか一流誌への掲載は難しく、私自身、SpineやEuropean spine journalにアクセプトされた経験はなく、実際には、脳神経外科あるいは神経科学系のもっと別の雑誌に投稿となっています。

 

Journal of Clinical Neurscience

Neurologia medico-chirurgica (日本脳神経外科学会の雑誌)

Surgical neurology internatinal (Open accessですが、比較的安いです)

いずれもIFは1~2くらいですが、候補としていかがでしょうか。

また、実際、そこまで有効かどうかは微妙ですが、

 

Find journals | Elsevier® JournalFinder

Journal Selector | Edanz Group

 

などは、論文のタイトルとアブストラクトを入力すると,ジャーナルの中から相応しいものをピックアップしてはくれます。