"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

脊髄損傷に対する再生医療、ステミラック治療の論文

以前、脊髄損傷の症例を、脊髄再生医療のひとつであるステミラック治療を札幌医大にお願いして、転院させて頂いたことがありましたが、その札幌医大から、ステミラック治療に関して、Phase 2のstudyで、13例のケースシリーズが出ていました。2021年2月のacceptです(Honmou O et al. Intravenous infusion of auto serum-expanded autologous mesenchymal stem cells in spinal cord injury patients: 13 case series. Clin Neurol Neurosurg 2021)。

脊髄損傷に対する再生医療等製品「ステミラック注」を用いた診療について |お知らせ |札幌医科大学附属病院 (sapmed.ac.jp)

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ステミラックの早期承認は色々と批判もあるようですが、重症脊髄損傷に対して期待されている治療です。

「条件付き早期承認制度」は患者をだましているか|Beyond Health|ビヨンドヘルス (nikkeibp.co.jp)

以前、患者さんを搬送したときには、この治療の前に、癌のrule out目的などでかなりの検査を行うなど、現状は、適応は色々と厳しいものですが、この論文では、13例のASIA gradeの変遷などが細かく書かれています。

13例中、ステミラック治療前のASIA gradeはAが6例、Bが2例、Cが5例でした。年齢は21~66歳で全員男性です。6か月後の転帰は下記になります。

 治療前 grade A 6例 → 治療後 A 1例、B 3例、C 2例

     grade B 2例  → 治療後 C 1例、D 1例

     grade C 5例  → 治療後 D 5例

grade Cの症例は、細胞療法開始の翌日より、Dに改善したとのことです。

grade Aで改善のなかった症例は21歳で、C4/5の両側の脱臼骨折でした。手術は発症から2日目になされたようです。ASIA Aの骨傷ありでは、やはり早急な手術がまずは必要でしょう…

治療結果については、今後も出てくるとは思いますが、Grade Aはやはり厳しいのかという印象です。B、Cはいい適応かもしれません。

過剰な期待は禁物で、外科治療が必要な場合には、速やかに行うことは必須でしょう。