"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

脊椎外科医は神経学診察、MMTの勉強から

幸いにも今の病院には、4月になると、脊椎手術の経験がない新しい先生が入ってきます。手術はまずは助手ですし、徐々に覚えてもらうとして、まず、必須なのが、神経学的診察だと思います。

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参考書は、自分が脊椎を始めた10年くらい前のときには、整形外科医のための神経学図説(原書第2版)、をまず勧められました。最初はこれでもいいかとは思いますが、十分ではないように思います。

脊椎脊髄ハンドブック 第3版、は多くの若い脊椎外科医が持っているようです。神経学もかなり網羅していると思いますが、個人的に、上下肢筋力をしっかりと評価する、という点で、園生先生の、MMT・針筋電図ガイドブック、が必須だと思います。

タイトルに針筋電図とあるので、何となく、重要性が劣る参考書のように思いますが、MMTの取り方について、各筋肉毎に細かく書かれていて、非常に重宝します。

例えば、大腿四頭筋を仰臥位で評価する際、伸展位では、わずかな筋力低下が見逃されるので、60°屈曲で評価したときにbreakされる場合にMMT4+としている、や筋肉によっては、動けば、重力に抗うので、MMT2と3に差がなく、MMT3はつけない、など、MMTのgradingのより詳細を学ぶことができます。

また、MMT評価をする際には、測定する筋の近位の身体部分は固定する、といった基本(この本を読むまで知りませんでしたが…)もしっかりと記述されています。

MMT・針筋電図ガイドブック

座学で知識を入れて置いて、上級医やPT、OTのリハビリ記録などの評価を参考に、自身でも評価して、一致できるようにすることが必要なのではないかと思います。PTやOTはこの所見をとるスペシャリストなので、色々と質問してもいいとは思います。医師がとるMMTよりも、PTがとるMMTの方が、低いことが多いです。たとえば、iliopsoasで、瞬間的に、大腿を持ち上げることができると、重力に抗っている、とMMT3をつける人いますが(私も以前そうでした…)、PTに聞くと、それが持続できないと3はつけないようです。それを聞いてからは、iliopsoasの評価は変わりました。

細かく指導してくれる上級医がいればいいでしょうが、実際には難しいので、ある程度は自分で学んで、あとはわかる人に質問する、というスタンスが良いと思います。