"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

LLIFの際のpsoas minor muscle

日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS)のオンデマンドは、非常に興味深い講演が聞けて勉強になります。

綾部ルネス病院の深谷先生の、”LLIFにおける合併症を回避する基本手技”、という講演が、非常に教育的でした。大腰筋の前から入るアプローチだと、尿管、大血管損傷の可能性があるので、経大腰筋transpsoasでアプローチする、という施設は多いと思います。私も、基本的には、そうしていましたが、大腿神経障害の可能性があります。彼らは、60%に存在しているというPsoas minor muscleのTendonを確認して、それの背側より侵入すると安全、ということでした。大腿神経は大腰筋内の背側で走行しています。

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また、O-armがあるけれど、Naviではなく、C-arm下で行うということでした。被爆の問題はありますが、Real timeで確認することは、安全だとは思います。

そして、透視時間を短くできる工夫としては、Cobbやキュレットの先端から55mm位置でテープを巻いてマーキングして、そのマークより深くは入れない、ということでした。挿入した深さを透視で確認する頻度は下げられると思われます。

tendonは神経のようにみえてしまうこともあるかとは思いますが、神経刺激などと併用すれば、transpoasで安全に手術することは可能かと思います。

また、同じセッションでは、京大の整形外科の大槻先生が、ケージを椎体の前側、腹側に置いて、前弯を作ることを強調されていました。前方に置くことで、回転中心が後方になって前弯が作れる、と話されていました。

日本脊椎・脊髄神経手術手技学会は、発表者、術者が、手術で気にかけているポイントを色々と話してくれて、非常に有意義なものだと思います。