脊椎外科医にとって、神経診察は非常に重要ですが、混乱することもあります。髄節に関する記載など、本によって、微妙に異なります。ちょっと整理してみました。
とりあえずは、下記のような形で髄節診断はある程度、できるのではないでしょうか。
・ C6→上腕二頭筋、手関節伸展(背屈)…主には長・短橈側手根伸筋
・ C7→上腕三頭筋
・ C8→指伸筋(総指伸筋)…橈骨神経からの後骨間神経支配のため、尺骨神経障害では障害されない
・ T1→短母指外転筋
本によっては、腕橈骨筋はC6が主、とあったりもします。
C7に手関節屈曲を入れないのは、手関節屈曲は、C7支配である橈側手根屈筋以外の寄与で、C8障害でも低下するようで、C7は上腕三頭筋、ということで診察しています。
頚椎症の診断_臨床神経学雑誌第52巻第7号 (neurology-jp.org)
T1の障害は、臨床的には多くはないものの、短母指外転筋(APB:abductor policis brevis)は重要、だと思います。正中神経の伝導速度や、MEPモニタリングでもAPB誘導です。MMTを調べる際には、母指を垂直に立ててもらって、その起始部を押して、breakできるかどうか調べます。
母指球筋は4つで、短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋、母指内転筋で、母指内転筋は尺骨神経支配で、それ以外は正中神経支配です。脳外科の専門医試験前にみんなで覚えた気がします。正中神経障害では、母指と示指でOが作れなくなり、涙のしずく様になります(tear drop sign)。
尺骨神経障害の際には、母指内転筋の筋力低下により、Froment徴候(母指が屈曲して代償する)がみられます。
C8障害か尺骨神経障害の鑑別には、finger split signや指伸筋(総指伸筋)の麻痺(橈骨神経支配のため、尺骨神経障害では障害されない)などが参考になります。
脊髄疾患なのか末梢神経疾患なのか、不要な手術を避けるためにも神経診断学は重要です。