"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

両開き(double-door)と片開き(open-door)の比較

椎弓形成術には、両開き(double-door)と片開き(open-door)があります。

私は、両開きですが、最近は、片開きの先生が多いような印象があります。片開きの方が、恐らく、手術時間は短くできるとは思います。一方で、C5麻痺の頻度は片開きの方が高い、といった報告もあり、両開きを好む先生も多いとは思います。

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最近のSPINEに、この2法の比較検討を行った多施設共同研究の結果が出ていました。Corresponding authorは、慶応大学整形外科の先生でした(Nagoshi N et al. Comparison of Surgical Outcomes After Open- and Double-Door Laminoplasties for Patients with Cervical Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament: A Prospective Multicenter Study. Spine. 2021 May 6. PMID: 33958538)。

国内の28施設で行われた前向き多施設研究です。478症例が登録されています。対象は頚椎OPLLのみで、CSMなどは除外されています。片開きを行うか、両開きを行うかの判断は、術者の判断にゆだねられているようです。

フォローアップ期間は2年間で、結局、この論文では、片開きは41症例、両開きは164例となっています。片開きが少ない印象です。

2年後の、JOA、JOACMEQには、差がなく、また周術期の合併症にも差がない、という結論になっています。頸部のVASに違いが出て、片開きの方が疼痛が少ない、という結果だったものの、両開きの疼痛が強いものではなく、臨床的にはあまり意味がないのではないかと書かれています。

周術期のC5麻痺は、過去、両開きが少ない、という報告も散見されるものの、この論文では、片開きで4.9%、両開きで6.7%とそれなりの数値になっています(P=0.50)。OPLLを対象にしているので、数値が高かった、という考察でした。前向きなので、C5麻痺が見逃されにくいのもあるかとは思います。

手術時間や出血に関する記載はなかったです。

どちらの手術方法も、後方減圧が目的で、原理的には同様であり、極端な差は出ないものと思われ、妥当な結果のように思います。