"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

橈骨逆転反射と手指屈筋反射

先日、頚椎症性筋萎縮症を疑う症例が外来にきました。筋萎縮性側索硬化症(ALS)も鑑別にはなるために、念のため、神経内科にコンサルトしたところ、橈骨逆転反射もあり、C5,6髄節障害で間違いなく、頚椎症で、ALSではない、との返事を頂きました。

橈骨逆転反射という現象は、聞いたことがなかったので、調べてみましたが、

橈骨逆転反射とは、腕橈骨筋の腱反射で、橈骨端を叩打したときに、腕橈骨筋反射が生じず、手指の屈曲が生じる現象、とのことです。C6髄節の腕橈骨筋の腱反射が消失し、C8髄節の手指屈筋反射が亢進(索路症候)することによって出現し、C5,6髄節の障害を反映する、とのことでした。

Youtubeで動画が確認できます。Youtubeは非常に便利ですね。

Inverted Supinator Sign - YouTube

腕橈骨筋反射は、少し出しにくいこともあり、さほど、気にとめてませんでしたが、これは、頚椎症の診断には、必須だと思います…

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手指屈筋反射は、正常では出にくいため、一般には、病的反射として取り扱われますが(ベッドサイドの神経の診かた)、ホフマン反射、トレムナー反射、ワルテンベルグ反射の3つがあります。C6-T1髄節のようです。ホフマン反射は、学生の頃に習った記憶があります。中指の爪を掌側に強くはじいたときに、母指が内転屈曲すれば陽性です。

自らの不勉強さに辟易します…

臨床神経学雑誌第52巻第7号 (neurology-jp.org)

ちなみに、頚椎症性筋萎縮症は、脊髄の髄節障害で、上肢の髄節性の筋力低下,筋萎縮を主症候として,感覚障害がないか軽微なものです.頸椎症性筋萎縮の機序は,前根の障害と前角の障害の両者がありえるようです。