"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

肘部管症候群の手術

先日、はじめてKing法での肘部管症候群の執刀をさせて頂きました。

手術の注意点のおさらい。

・患者が左手の障害の場合、術者が右手であれば、近位側から遠位側へ剥離するので、患者の体位は、腹臥位にして、回内させて肘部管が上を向くようにする。

皮膚切開は、尺骨神経上、尺骨神経溝に置く。

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術者は、患者の脇側に入る。

・皮膚切開後、皮神経を温存するように、鈍的に皮下を展開する。

・近位側で尺骨神経を同定。遠位側では尺骨神経は分枝があるので注意。用手的に確認しながら。神経がわからなければ、刺激装置を使う。直接刺激では、0.5mAから(「超」入門 手術で治すしびれと痛み)。

・神経剥離。神経の走行に垂直方向に剥離する(神経が牽引されるが、細い血管を切らないために)。血管を残ることは神経回復に重要。

・展開には、鮎針が有用

解剖学的な5つのentrapmentの部位は、

 ・Arcade of Struthers

 ・Intermuscular Septum (筋間中隔)

 ・Medial Epicondyle (上腕内側上顆)

 ・Cubital Tunnnel (肘部管)

 ・Osborne band、Aponeurosis (flexor carpi ulnaris muscle,尺側手根屈筋)

5つあるが、多くは、肘部管とその遠位。伝導速度のインチング、Tinelの結果を参考。

 肘部における絞扼性尺骨神経障害 (jst.go.jp)

・上腕内側上顆の骨膜に局所麻酔。骨膜は痛い!

・骨膜を切開後、内側上顆をリウエルなどで切除する。尺骨神経が乗り上げても大丈夫な程度に。骨ろうで止血をする。

・骨膜は再度、縫合して形成する。

・皮下を埋没縫合して終了。