"せきつい"ブログ

脊椎専門の脳神経外科医のブログです。脊椎手術や学術に関する私見、患者さんとの会話、助言など、記録にしています。 また、アメリカ留学中のイベントなどについても書き込みしています。

クロスリンク(cross-link)は有用か?

脊椎の固定術で、クロスリンク(cross-link)を入れることがあります。

クロスリンクは実際に有効なのでしょうか?

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 PPS(経皮的椎弓根スクリュー法)を使うようになって、クロスリンクを入れる頻度が減っていますが、オープンで椎弓根スクリューを入れた際には、クロスリンクを併用することが多いと思います。 

回旋に対して、有効だから、と上級医にいわれ、そういうものかと思い、特に疑いもせず、使ってきましたが、報告があるのか調べてみました。 

  

Global spine journalでは、Ming-Kai Heiehらが、豚で行ったIn vitroの実験を報告しています (Hsieh MK et al. Global Spine J. 2021 PMID: 33511875).

クロスリンク(cross-link)は、下図の右のように2つ入れると、入れない場合や真ん中に1つ入れた場合よりも、回旋に対する制動が良くなる、とのことでした。直感的にも右の方がよい気はします。

ちなみに、豚の脊椎は、頚椎が7、胸椎が15か16、腰椎は6個のようです。

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邦文では、

三重大学の中上 祐希先生らが、整形外科63(7), 2012で、

"脊椎インストゥルメンテーションにおけるクロスリンクに関する生体力学的研究"

というタイトルで、イノシシ死体の腰椎での実験の報告をしています。

 

クロスリンク位置を、ロッドの上方、真ん中、下方、に設置して、その違いなども検討していますが、結果、

・クロスリンク設置により、回旋に関する制動が高まる

・クロスリンク設置の高位に関して、効果に差はないので、入れやすいところに入れればよい

ということでした。